豊丘時竹の続続「平素の戯言」

エッセイでもコラムでも随筆でもなく、ミセラニーです。

 身だしなみ

 身だしなみのことが話題になったときのことである。高校生のみだらな服装をなんとかしたい。それには高校に道徳教育を復活しなければならない、ということになった。はからずもこのことで高校に道徳教育が行われていないことを、私は知った。もっとも私の高校時代にもそういう名前の授業などはなかった。中学でもなかったかと思う。国語や社会科などの授業の中にそれとなくまぎれこませてあったのだろう。
 身だしなみについて、ある大学でのことである。一人の学生が靴の紐を結ぶことなく引きずって歩いているのに出会った。しかも靴紐がやけに多い。紐に飾りの紐を付けて、足を上げることなく歩いている。靴紐を踏まないようにするのに、なんの苦労をしている様子が見えない。お見事と言うしか言葉がなかった。
 靴紐以外はきちんとしていたから、意図してやっているのである。不思議な身だしなみもあるものである。
 だからどうだ、と言うつもりで述べたのではない。不思議な身だしなみもあるものだと言いたかっただけである。