豊丘時竹の続続「平素の戯言」

エッセイでもコラムでも随筆でもなく、ミセラニーです。

日本は男性差別社会である

男性差別社会」。このように表現していたと思うが、この言葉は太田述正さんの造語である。意味するところは、男が女性より不利に扱われているということである。今の日本の社会通念とは逆だから戸惑われるかもしれないが、わけはこれから説明していこうと思う。しかしうまく説明できるかどうか。

 私の父は物心ついたころ一時電気屋をやってへいたが、私が小学校上がるころはサラリーマンであった。そしてそれ以後サラリーマンを通しサラリーマンで定年を迎えたから、私が知っている父はほとんどサラリーマンであった。父はその間サラリーマンの語源ともなっているサラリーつまり給料を、給料袋ごと母に手渡していた。昔は給料袋だったのである。私もかなりの期間給料袋で現金の給料を受け取っていた。父は手渡した給料から小遣いをもらっていたようだ。

 私も就職し給料を受け取るようになり、やがて所帯を持つと、袋ごとかみさんに渡すのが当たり前だと考えていて、そうやって今に至っている。今は年金暮らしで、年金はすべて銀行振り込みされていて、管理一切はかみさんに任せっきりである。

 何で見たかとっくに忘れているが、日本では給料はかみさんが受け取り、亭主は小遣いをもらう、というのを知ったアメリカの女性が、「うらやましい」と言ったという。アメリカでは亭主が家計費をかみさんに渡すそうだ。だから小遣いはかみさんが亭主からもらうのである。これではかみさんだって働きたくなろうというものである。

 日本では、専業主婦という言葉があるが、その場合、給料は全額かみさんに渡されてそれで切り盛りせよと言われるのを前提にしている。私はそう考えている。そしてそれは給料が安くても二人分をうまくまかなえるからだと、私たちは言われてきたような気がする。

 一人ぶちは食えぬが二人ぶちは食える、などという戯れ言があるくらいである。年功序列賃金体系では、とくに若いころは給料が安いから、安い給料をかみさんに我慢させる方便として、かみさんに全額渡していたのだろう。かみさんは渡された給料から自分で自分の小遣いを捻出するのは、そんな給料では可能なはずはないのだが、不可能ではないと思い込むことはできる。つまりは自分が働く意欲はアメリカの夫人ほどではなかろう。

 一九七六年年に、わが家族は国から支給を受けて一年間アメリカで暮らした。研究職公務員として、いわゆる一年の留学の機会を与えられた。その時は、滞在費は国から銀行振り込みで送られてきた。女房は、小学校に上がる前の子供二人の世話で手一杯で、車の運転免許を取ることもなく、また銀行の手続きやお金を下ろす作業にも手が回らず、すべて私が手配していた。一週間分の必要経費を吟行から下ろしては、私が手渡していた。スーパーなどの買い物では、小切手を私が振り出して払っていた。女房は自由になるお金が全くなくて、「あのころは不満だったわ」と後年言ったのだが、今はそんなことを言ったのは覚えてない。

 大方のサラリーマンがかみさんに給料を全額渡していると思っていたが、知り合いには複数人そうでない人がいた。ある方はかみさんが自分の小遣いが必要でパートをしていた。しかしこれらの例はまれだ、と私は考えていて、日本では大方の家庭では亭主の稼ぎもかみさんのもの、というのが、男性差別社会の証拠の一つである。

 離婚した場合、アメリカのテレビドラマでは、親権は男親がもっている例が多い。そのようなテレビ番組が多かったように思う。どんなテレビ番組だったかと問われても、正直なところ答えられない。しかし日本ではほとんど女親がとる。これなども男性差別の証拠になるだろう。太田さんは、男性差別社会の結果そうなっていると述べておられたと思うが、私は証拠の一つだと考えている。

 東京医大の女子受験者の点数を割り引いて合格者を決めていたのも、男性差別社会の現れである、とこれも太田さんの説だった。

 病院では男の医師は、女性の医師と比較してきつい作業が多いようだ。病院勤務の女性医師を少なくしてくれという現場からの男医者の悲鳴が、このような結果になったのだという。女医がつきたがる専門診療科目の給料を減らせと太田さんは述べていた。

 上に述べてきたことがらで、日本が男性差別社会であるという主張に十分耐えると考えるが、不十分だという人もいよう。

 例えば、結婚するとたいていは男性の姓を踏襲するではないか。墓守りは男性が受け持つではないか。こんな反論がありそうだ。これらこそ女性蔑視だと言われそうである。

 逆である。男を表に立たせ、実権は女が握るには、これが都合がいいのである。

 

 

 リフレーン1

 防衛キャリア30年太田述正

 最大の安全保障はアメリカからの独立                                                                            https://www.ohtan.net/report/pdf/ohtan-blogtitle.pdf

 

 

 リフレーン2

 日本と中国をいつまでも仲違いさせておくことは全欧米諸国の、ここ百年の基本戦略である(藤原正彦管見妄語」162、週刊新潮31号、平成24年から)