豊丘時竹の続続「平素の戯言」

エッセイでもコラムでも随筆でもなく、ミセラニーです。

属国

「月刊ずいひつ」に投函したいと考えて、標題であたためていた二千字の原稿がある。しかしどうもちかぢか総選挙がありそうな雰囲気である。本原稿には、民主党を支持するといった表現も出てくるので、総選挙の前に公表したい。「はてな」のこの欄を借りて、以下に公表する。紙媒体に残したかったが、そこまで待てない。残念である。
 なお本作は「NHK学園木村治美のエッセイ教室」の添削を受けている作品でもある。これは余計なことであったか。


 昨年の11月24日に脱稿して、事情があって「月刊ずいひつ」に投函する機会を待っているうちに、今日になってしまった。ここに強引に上梓して、とりあえず、総選挙が決まるまえに公開できたとほっとしているところである。

 お読みいただいた方に、属国から抜け出すための努力を、個人の力はささやかではあるかもしれないが、してみませんか。そう訴えたいのです。


 リフレーン
 日本は原爆をもとう。


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   属国
                豊丘時竹
 日本はアメリカの属国だという。それも自ら進んで属国になっているのだという。
 うすうすそんなところだろうと想像していた。とは言っても、その言葉を使って理解していたわけではない。日本とアメリカの関係はどこか尋常ではない、となんとなく感じていたにすぎない。
『属国の防衛革命』(太田述正兵頭二十八)を読んだ。すばらしい本である。まず第一章で、日本は属国であるがそこから抜け出すことはできる、と示唆している。さらに日本の防衛のあり方、政権交代の必要性、日本における核武装の可能性があったらしい歴史、などが述べられていく。
 ただ本文は、本書の書評ではない。まえがき、あとがきを含めて二三一ページもあり、しかも十一章にわたるオムニバス形式の本を二千字で書評することは、私の筆力のとうてい及ぶところでない。
 特筆したいことを字句を引きつつ述べるくらいで、言及できた章は三章だけであった。
 本書は、編集の仕方に特徴がある。太田氏と兵頭氏の共同執筆だが、太田氏の章については、氏の過去のメールマガジンのテーマから兵頭氏と高道氏がテキストを選び、それを兵頭氏がリタッチし、最後に太田氏が補訂したという。一冊の本を作るおもしろい例だ。そういう作り方をしたので、著者を「太田述正兵頭二十八」のように「+」記号を間に入れたのかもしれない。
 本書の基調は、「日本はみずから望んで米国の属国になっているだけ」(太田述正執筆)と題された第一章である。長くなるが、最初と最後の部分をそっくり引用する。


  防衛省などに勤務していれば、物の喩えなどではなく「日本は米国の属国である」
  という事実につき、フツーの知性ある人間であれば遅かれ早かれ、分かってくるも
  のだ。


  日本人は、自衛隊イラクに派遣されるまでになった今こそ、米国に対する過去の
  怨念を白日のもとに晒し、これを相手にぶつける形で、米国との間で真っ向から歴
  史論争を行なうべきであろう。米国の知識人の大部分は、日本の言い分に耳を傾
  けた上で、心から謝罪してくれるであろうことを、わたしは信じている。
  それは、日本人が吉田ドクトリンを克服する日でもあろう。


 吉田ドクトリンは、だれもが知っている言葉であろうが、私は本書とネットでの検索結果とからつぎのように推察した。
 憲法九条を維持した上で、外交・安全保障はアメリカに丸投げし、軽武装、経済重視で国家を運営するという政策である。
 太田氏は、アメリカに日本人の怨念をぶつけて歴史論争し謝罪を勝ち取れば、吉田ドクトリンを克服できる、と主張している。それが属国から真の独立国になる基本であると提示している。私はそう考えた。
 氏はさらに、真の独立国になるための具体策も提案している。第三章「政権交代が日本の独立を回復させるメカニズム」だ。
 ここでの論旨は次のようになる。
 自民党は、官製談合を中心とする官・業の癒着構造にたかる「談合政党」である。談合政党は利権の維持だけしか念頭になく、外交・安全保障政策に取り組むわけがない。民主党が政権の座につけば、事情通の野党自民党の監視下では、癒着構造を作ることはできない。談合以外のこと、つまり外交・安全保障政策に取り組まざるを得なくなる。ただ十年も権力の座につけておけば、民主党も「談合政党」になる。四、五年で再び政権の座から引きずりおろさなくてはならない。こうしているうちに保護国的地位から脱却できる。
 ここまでで本書の目的はほぼつきている。私は自民党支持者だが、本書を読み終え、民主党に委ねてみたいと思うようになった。
 本書のもう一つの重要箇所、第七章「神功皇后豊臣秀吉の対支戦略」にごくかんたんに触れる。「シナ」の属国政権とならないようにするために、日本は古代から苦心してきた。それは東アジアの国々も同様で、属国になっていない国は何千年も「シナ」との戦いを繰り広げてきたという。
 政治はだれかに託さなくてはならない。言論も同じだと私は感じている。政治に対する適切な判断ができない私は、だれかの意見を信じるしかない。その点、本書はなんとも頼りになる。近くの大きな書店に平積みで置かれてあったから、広く読まれているのであろう。頼もしいことである。