太田述正コラム#10880(2019.10.24)
<皆さんとディスカッション(続x4235)>

<太田>(ツイッターより)

 「左」の人から著書が送られてきたので、半年前に「右」の人が持参された著書、と共に先程斜め読みしたのだが、相互に一面識ものない二人が著書上で論争しているような内容なので苦笑してしまった。
 どちらも先入観に余り囚われないからこそ私への好意的言及が出て来るのだが、「余り」じゃダメみたい。

<太田>

 上に出てきた著書とは、田中稔『忖度と腐敗–モリカケから「望月衣塑子」現象まで』(α)、と、小杉山基昭『竹を食う–私の身近の偉人たち』(β)だ。
 私は、お二人とも、随分長きにわたるお付き合いがあるのだが、今回、初めてそれぞれの詳細な経歴を知った。↓

 田中さんは、「1959年生まれ。中央大学法学部政治学科を卒業。89年に日本社会党(現・社会民主党)・・・書記局に入局。同党機関紙「社会新報」編集長(現職)。・・・村山・・・首相の公邸付秘書を務めた・・・」(α)のに対し、小杉山さんは、「1942年・・・千葉市に生まれる」(β奥付)9、「東京大学理科II類に入学し・・・ロシア語を履修し・・・弓術部に入った・・・<そして、>農学部の畜産獣医学科に進学した」(β24p)、「東京大学・・・農学系研究科修士・・・厚生労働省研究員・・・農林水産省研究員」(β奥付)「<同省から>一年の海外留学・・・<帰国後、博士号取得。>。」(β120p)、「・・・茨城大学農学部助教授(β121p)>・・・茨城大学名誉教授」(β奥付)、という経歴だ。

 両著における私への言及は次の通り。↓

 「官製談合事件について防衛省仙台防衛施設局長を務めた太田述正さんは次の通り指摘しました。<以下省略。コラム#5777(2012.10.12)に転載された社会新報記事(太田)>」(α131p)、と、「『防衛庁再生宣言』を読む」(平成28年)(β67~72)、とりわけその中の、「氏の再生への提案が、民主党誕生や第二次安倍内閣での政府解釈変更による集団的自衛権の容認、「思いやり」予算の削減、武器輸出制セクの緩和などを通じて、実現しつつあるように私には思われるのである。「予言の書」と位置付けする所以である。本書は、再版されてないようである。いつの日にか、新しい情勢も加え、再版されることを願っている。」(β72p)、そして、「太田述正さんのコラムを読むようになった<ところ、>・・・太田さんはアングロサクソンの考えを引いて説明する。それが説得力のあるものに思われ、いつかは太田さんのアングロサクソン論を読み通したいと思ってい<る。>」(平成29年。86p)、更には、 「ケント・ギルバート氏は・・・憲法第9条第2項に自衛隊のことを書き加えることでもよしとする<と>・・・述べた・・・<が、、>この点<は、>私は、太田述正氏のそれでは属国の強化であるという考えに賛成である」(β96P)

 なお、守屋のこの話は全然知らなかったので興味深かった。↓

 「守屋元次官への裁きと現在–出所後の2億円要求訴訟が棄却の醜態」(α113~115p)

 さて、「相互に一面識ものない二人が著書上で論争しているような内容」については、次の通り。↓

 日本会議に関し、「「日本会議」の正体(上)–中枢部には元「生長の家」右翼学生運動家」「「日本会議」の正体(中)–閣僚の8割以上が極右議連に加盟」「「日本会議」の正体(下)–日青協が起こした自民党本部無法占拠事件」(α51~59p)、「籠池理事長は日本会議の大阪支部で代表・運営委員を務め、安倍首相も日本会議国会議員懇談会の特別顧問の立場にあります。つまり両者は改憲策動を推進する右派統一戦線である日本会議という極右の軸で固く結ばれています。」(α28p)、「日本会議の源流は「改憲」ではなく「反憲」の勢力です」(α53p)、に対するに、「「私<は>日本会議茨城<の>・・・理事を務める」(β92)、『日本会議の研究』を読む」(β87~91P)。
 そして、原発に関し、「原発村の闇を追え(1)–巨額の広告費でメディアを操る電事連」「原発村の闇を追え(2)–これは麻薬だ 電源交付金自治体を蝕む」「原発村の闇を追え(3)–正力と中曽根を操った米情報機関」「原発村の闇を追え(4)–利権にうごめく原発族議員合従連衡」「原発村の闇を<追>え(5)–22長円株主訴訟と幹部の財産隠し」(α241~255p)、に対するに、「福島県は長生きランドになる」(β23~29p)「左翼は福島原発事故をどう報じたか」(β30~41p)。

 私見では、田中さんが所属する社会党社会民主党)が小杉山さんが会員である日本会議がもっぱら支援している自由民主党と政権を組んだことがあることが象徴しているように、私の言う、大政翼賛会の戦後版にお二人ともシンパシーを寄せておられる・・但し、全面支持ではない、と僭越ながら推察している・・わけであり、相互のお考えにさしたる違いはないはずだ。
 例えば、日本会議だが、安倍改憲を支持している(典拠省略)のだから、軍隊を持たずに対米属国状態を堅持する、という点で社会民主党と全く同じだし原発については、横須賀における米原子力空母(≒原発)の事実上の母港状態への反対を反原発の筆頭に掲げていない社会民主党等(典拠省略)の反原発なんて、インチキの極みで自由民主党原発政策と大差ない、と私はかねてから指摘しているところだ。

 以上のような話を書いたことで、お二人に何らかのご迷惑がかかる可能性があるかもしれないので、あらかじめお詫びしておく。
 最後に、それぞれが、ご著書を贈呈いただいたことに、改めて御礼申し上げる。